花は所を定めぬもの

私の家は典型的なサラリーマン家庭だった。

父は家庭をかえりみなかったし
専業主婦の母は家事をさぼっていた。

私は毎日同じ服を来て学校へ行っていた。
母は洗濯もろくにしなかったし

私に習い事もろくにさせはしなかった。
吝嗇だった。そのくせ、ゲーム機は買った。

私の教育の妨げでしかなかった。
母はことあるごとに私に怒鳴った。

母は父との離婚を機に統合失調症を発症した。
その前からやはり前兆は会ったといえる。

夜通し怒鳴り散らして私にキレていた。

「花は所を定めぬもの」とは、立派な人間は
誰が見ていなくても善い行いをするということ
のたとえというが、もちろん私なんか
立派な人間であるはずはなかった。

いまでも急いでいるとき
まわりに誰もいなくて交差点の信号が赤で
渡りたいことがあるが、やめる。
べつに立派な行動をとらなければと
思ってやめるわけではない。

もともと私は自分の感情をおさえる力
が不足ぎみの人間だから、一度、自制
を破ると、この先もう際限なく無節操

なことをするような気がして恐ろしく
それで仕方なく自分をおさえている
だけのはなしだ。